月輪の都 『貌無き墓標』・カタチ ナキ ボヒョウ
2004年10月22日彼の英雄じみた行動は、
我々の 心に燈(ともしび) 宿したけれど、
…到底、辿りつけるとは…思われなかった…。
行くな と、この身を 挺することも、
やめろ と、声の限りに 叫ぶことも、
戻れ と、体を掴んで 制することも、
何一つ、動くことが 出来なくて。
眼には見えない足枷が、我々総てを 縛っているかのように、
竦んだままで 呆然と、見送ることしか 出来なくて。
緑の大地は、焼け野原。
長閑(のどか)な郷は、燻る廃墟。
悲痛な呻きは 切れ切れに、嘆きは途切れ 閉ざされて。
瓦礫の下の 泣き声が、やがて か細く 消えてゆく。
見る間に 小さくなる姿。
瞬きするもの 惜しむよう、焼けた喉には 血が溢れ、
歩みを止めた 人形のように、
焦土に穿たれ 見送る私。
やがて 遠くに 見えなくなるまで、涙が零れる 事もなく。
やがて 閃光 晄るまで、涙が溢れる 事もなく。
…到底、生きて 在るとは、思われなかった…。
我々の 心に燈(ともしび) 宿したけれど、
…到底、辿りつけるとは…思われなかった…。
行くな と、この身を 挺することも、
やめろ と、声の限りに 叫ぶことも、
戻れ と、体を掴んで 制することも、
何一つ、動くことが 出来なくて。
眼には見えない足枷が、我々総てを 縛っているかのように、
竦んだままで 呆然と、見送ることしか 出来なくて。
緑の大地は、焼け野原。
長閑(のどか)な郷は、燻る廃墟。
悲痛な呻きは 切れ切れに、嘆きは途切れ 閉ざされて。
瓦礫の下の 泣き声が、やがて か細く 消えてゆく。
見る間に 小さくなる姿。
瞬きするもの 惜しむよう、焼けた喉には 血が溢れ、
歩みを止めた 人形のように、
焦土に穿たれ 見送る私。
やがて 遠くに 見えなくなるまで、涙が零れる 事もなく。
やがて 閃光 晄るまで、涙が溢れる 事もなく。
…到底、生きて 在るとは、思われなかった…。
月輪の都 『空洞の月』
2004年10月19日寂しい色した君の背。
虚しい響きの君の声。
悲しい続きの君の夢。
不毛の岩肌 崩れ落ち、誰 知る事無く 砂へと還る。
荒ぶ強風 哭き声と、魔物の息吹と、震えつつ
暗き 洞へと 呑まれて消える。
一夜の安息 求めた岩陰、一夜の宿を 探した洞窟、
一夜の刻を しのいだ 廃墟。
心 此処にあらぬ故、瞳を伏せても 怖くない。
嵐の後に 訪れる、無音の 世界を 待ち望み、
中空 征する 月を待て。
海を割った道のよに、昼を裂いた 宇宙(そら)のよに、
山を喰った野火のよに、空虚を宿した 君の胸。
蹉跌の路傍に 疲弊して、腰を下ろした ままの君。
荒野に穿たれ、熱砂に巻かれ、仰ぎ睨んだ 姿で独り、
埋める術無い 空洞抱え、声無き慟哭、空へと 向かう。
千に一つの邂逅を、
万に一つの解脱を求め、
億に一つの涅槃を得れば、
君の桎梏、滅する事が、出来ようか。
黒曜石の君の眼に、欠け満つ 月は 如何様に、
映り 輝き、消えるのだろか。
地中深くに 閉ざして眠る、化石の夢を 観る君に。
虚しい響きの君の声。
悲しい続きの君の夢。
不毛の岩肌 崩れ落ち、誰 知る事無く 砂へと還る。
荒ぶ強風 哭き声と、魔物の息吹と、震えつつ
暗き 洞へと 呑まれて消える。
一夜の安息 求めた岩陰、一夜の宿を 探した洞窟、
一夜の刻を しのいだ 廃墟。
心 此処にあらぬ故、瞳を伏せても 怖くない。
嵐の後に 訪れる、無音の 世界を 待ち望み、
中空 征する 月を待て。
海を割った道のよに、昼を裂いた 宇宙(そら)のよに、
山を喰った野火のよに、空虚を宿した 君の胸。
蹉跌の路傍に 疲弊して、腰を下ろした ままの君。
荒野に穿たれ、熱砂に巻かれ、仰ぎ睨んだ 姿で独り、
埋める術無い 空洞抱え、声無き慟哭、空へと 向かう。
千に一つの邂逅を、
万に一つの解脱を求め、
億に一つの涅槃を得れば、
君の桎梏、滅する事が、出来ようか。
黒曜石の君の眼に、欠け満つ 月は 如何様に、
映り 輝き、消えるのだろか。
地中深くに 閉ざして眠る、化石の夢を 観る君に。
月輪の都 『夕ノ月』
2004年10月18日稜西へと 隠れる月は 宵月夜。
朱い輝き 薄暗く、手元の煙管が 音を立て、
落ちる 灯色の 如くかな。
細身の姿も 孤高の陰も、心に棲みし 面影と、
重なり 想いを反す 浅き宵。
何処か遠くに ひっそりと、佇む雰囲気 良く似てる。
見惚れる間もなく 空から消えた、連れない素振りが 良く似てる。
首筋残る 傷痕は、なぞる指を 求めてやまぬ。
白い晒しを 解いた日より、数えて幾歳 過ぎたろう。
色鮮やかな傷跡は、刻を経るごと 薄らいで、
歪な膨らみ 残して告げる。
忘れられる はずもなく、忘るる気など、ありもなく。
鏡に映る 契りを見ては、水面に落ちた 月の姿と、
同じ形かなと 嗤う口の端、涙が伝う。
あの日、重なり 倒れ臥し、冷たい板間に 零れた涙。
今も 乾く事なく 流れ落ち、ゆるり広がる 弐人の血溜り、
この瞳の 色さえ 染めた。
裂いた肉の色彩を しっかと心深くに 焼きつけて、
昨日の事の様に 繰り返しては、忘れ得ぬ。
白刃沈む、柔らかな 肌を切り裂く 感触と、
命消えゆく 双眸を、繰り返しては 忘れ得ぬ。
どうして私 一人だけ、この夜に残され 生くのだろ。
どうして私 独りだけ、この世に遺して 逝くのだろ。
耳を澄まして 声を辿り、心に棲まわせ 姿を想い、
眼を凝らして 月を探し、心に懲らしめ 刻を待つ。
朱い輝き 薄暗く、手元の煙管が 音を立て、
落ちる 灯色の 如くかな。
細身の姿も 孤高の陰も、心に棲みし 面影と、
重なり 想いを反す 浅き宵。
何処か遠くに ひっそりと、佇む雰囲気 良く似てる。
見惚れる間もなく 空から消えた、連れない素振りが 良く似てる。
首筋残る 傷痕は、なぞる指を 求めてやまぬ。
白い晒しを 解いた日より、数えて幾歳 過ぎたろう。
色鮮やかな傷跡は、刻を経るごと 薄らいで、
歪な膨らみ 残して告げる。
忘れられる はずもなく、忘るる気など、ありもなく。
鏡に映る 契りを見ては、水面に落ちた 月の姿と、
同じ形かなと 嗤う口の端、涙が伝う。
あの日、重なり 倒れ臥し、冷たい板間に 零れた涙。
今も 乾く事なく 流れ落ち、ゆるり広がる 弐人の血溜り、
この瞳の 色さえ 染めた。
裂いた肉の色彩を しっかと心深くに 焼きつけて、
昨日の事の様に 繰り返しては、忘れ得ぬ。
白刃沈む、柔らかな 肌を切り裂く 感触と、
命消えゆく 双眸を、繰り返しては 忘れ得ぬ。
どうして私 一人だけ、この夜に残され 生くのだろ。
どうして私 独りだけ、この世に遺して 逝くのだろ。
耳を澄まして 声を辿り、心に棲まわせ 姿を想い、
眼を凝らして 月を探し、心に懲らしめ 刻を待つ。
夢日記
2004年10月16日夢を見てる 夢を見た。
1・「大きな地震が来る。」と、誰かに聞いた。
そして キーワードは「4」だった。
2・続いて、幼くして 亡くした妹が 出てきた。
名前を呼んで 聞いてみたらば、笑って駆け寄って 来てくれた。
顔形は はっきり見ては いないのに、笑ってるように 感じてた。
ぽよん、とした その感触が、「ああ 妹だ。」と納得していた。
3・心願成就の刻が来て、いざ、実行に移すぞ!
と、いう夢を見たので、憶えておこうと想った。
ところが、それは夢の中で見た 夢だったと、
実際 眼が覚めて 気が付いた。
最初の夢の記憶が 鮮明だったのか、続いてみた夢は、
憶えていない。
けれど、確かに、目覚めた時は(夢の中で)、
部屋も明るく、朝だった。
そして、より現実的な 行動をしていた、とだけは憶えてる。
今朝、実際に起きた時は、部屋はまだ 暗かった。
と、いうことは、途中で目覚めて 寝なおしたってことではないという結論に至った。
ふむ、久しぶりに、憶えている 夢を見た。
感想は「微妙!」である。
突っ込んで 考えれば、「大地震」と「4」の関係は、震度ではないだろうと 推測する。
などと考えてるところに、ぐらっと地震がきたので、ちょっと驚いた。
確かに今年は よく揺れる。
だからこんな夢でも みたのかな〜。とも想う。
あと、ほかの人はどうなのか わからないが、よく体験するのは、夢の中では 客観的な立場で「自分」を見ていたりする。
自分の体を 見下ろしている 感覚だ。
「夢」の意味は様々な論があるが、本当の所は何なのだろう?
記憶の整理の為に 脳が自動的に行っている 編集作業だと聞いたことがあるが、すべてがそれに当てはまるのだろうか…。
だったら、もう一度見たいものとか、記憶の中にある 会いたい人に逢えたらいいのに、とか 思いもするが、なかなかどうしてそういう おいしい眼には あわないもんだ。
上手に夢をコントロールして 見ることが出来たら、結構なストレス解消になるのでは?なーんて、想ったりもする 今日この頃であった。
1・「大きな地震が来る。」と、誰かに聞いた。
そして キーワードは「4」だった。
2・続いて、幼くして 亡くした妹が 出てきた。
名前を呼んで 聞いてみたらば、笑って駆け寄って 来てくれた。
顔形は はっきり見ては いないのに、笑ってるように 感じてた。
ぽよん、とした その感触が、「ああ 妹だ。」と納得していた。
3・心願成就の刻が来て、いざ、実行に移すぞ!
と、いう夢を見たので、憶えておこうと想った。
ところが、それは夢の中で見た 夢だったと、
実際 眼が覚めて 気が付いた。
最初の夢の記憶が 鮮明だったのか、続いてみた夢は、
憶えていない。
けれど、確かに、目覚めた時は(夢の中で)、
部屋も明るく、朝だった。
そして、より現実的な 行動をしていた、とだけは憶えてる。
今朝、実際に起きた時は、部屋はまだ 暗かった。
と、いうことは、途中で目覚めて 寝なおしたってことではないという結論に至った。
ふむ、久しぶりに、憶えている 夢を見た。
感想は「微妙!」である。
突っ込んで 考えれば、「大地震」と「4」の関係は、震度ではないだろうと 推測する。
などと考えてるところに、ぐらっと地震がきたので、ちょっと驚いた。
確かに今年は よく揺れる。
だからこんな夢でも みたのかな〜。とも想う。
あと、ほかの人はどうなのか わからないが、よく体験するのは、夢の中では 客観的な立場で「自分」を見ていたりする。
自分の体を 見下ろしている 感覚だ。
「夢」の意味は様々な論があるが、本当の所は何なのだろう?
記憶の整理の為に 脳が自動的に行っている 編集作業だと聞いたことがあるが、すべてがそれに当てはまるのだろうか…。
だったら、もう一度見たいものとか、記憶の中にある 会いたい人に逢えたらいいのに、とか 思いもするが、なかなかどうしてそういう おいしい眼には あわないもんだ。
上手に夢をコントロールして 見ることが出来たら、結構なストレス解消になるのでは?なーんて、想ったりもする 今日この頃であった。
月輪の都 『天秤』
2004年10月15日白々明ける 異東の空に 慎ましやかな 薄紅。
恥じらう乙女の 頬色か、たゆたう衣の 裾広げ。
燦然 煌々 明六つ、覗き始めた日輪は、
強者放つ 弓矢の如く、四方八方 何処までも。
僕の腕(かいな)に、預けて寝む 優しい寝息と、
心地の良い 重さ。
痺れは じんわり甘い 疼きのようで、君を実感 添い寝して。
手櫛も軽い 絹の髪、擽るように 動いてる。
君をこの手に 暮六つ、一夜の恋と ならん事を 願いつつ、
僕は再び 遠い目を。
想いを馳せる 地は遠く、とても 君を 連れてはゆけぬ。
あてにならない 約束なんて、互いの重石に なるばかり。
君はなんと、答えるだろう。
僕はなんと、告げようか。
どちらにしても、痛みは避けて 通れない。
二人 甘い時間を 享受してしまった この後では。
罪を選んだ 訳でなく、罰から逃れる 訳でなく。
玻璃の壁越し 手を合わせ、冷たい口付け 交わしたら、
必死に心を 堰き止めて、浮舟の言葉を 交わしたら、
僕たちは 心残さず、笑って別れて 行けたのだろか。
それとも、心残して、俯き振り向きながら、行くのだろか。
独り旅立つ 未知は喜び、恐れを知らず。
数多の苦難が 待ち受けようと、勇む心に 呑まれて消える。
燻る想いを 抱えたままで、君との暮らしを 選んでも、
僕は君に 何一つ、返してあげられ そうにない。
子供じみた 我儘な、未熟な己を 知っているから、
今も 君と僕を 天秤に、懸けては 出せない 答えを探す。
恥じらう乙女の 頬色か、たゆたう衣の 裾広げ。
燦然 煌々 明六つ、覗き始めた日輪は、
強者放つ 弓矢の如く、四方八方 何処までも。
僕の腕(かいな)に、預けて寝む 優しい寝息と、
心地の良い 重さ。
痺れは じんわり甘い 疼きのようで、君を実感 添い寝して。
手櫛も軽い 絹の髪、擽るように 動いてる。
君をこの手に 暮六つ、一夜の恋と ならん事を 願いつつ、
僕は再び 遠い目を。
想いを馳せる 地は遠く、とても 君を 連れてはゆけぬ。
あてにならない 約束なんて、互いの重石に なるばかり。
君はなんと、答えるだろう。
僕はなんと、告げようか。
どちらにしても、痛みは避けて 通れない。
二人 甘い時間を 享受してしまった この後では。
罪を選んだ 訳でなく、罰から逃れる 訳でなく。
玻璃の壁越し 手を合わせ、冷たい口付け 交わしたら、
必死に心を 堰き止めて、浮舟の言葉を 交わしたら、
僕たちは 心残さず、笑って別れて 行けたのだろか。
それとも、心残して、俯き振り向きながら、行くのだろか。
独り旅立つ 未知は喜び、恐れを知らず。
数多の苦難が 待ち受けようと、勇む心に 呑まれて消える。
燻る想いを 抱えたままで、君との暮らしを 選んでも、
僕は君に 何一つ、返してあげられ そうにない。
子供じみた 我儘な、未熟な己を 知っているから、
今も 君と僕を 天秤に、懸けては 出せない 答えを探す。
月輪の都 『黄昏れ』
2004年10月12日つるべ落としの 秋の暮れ。
野辺に佇み 黄昏れて 思いに耽る 時は無く。
此れで五分 と 今より五分。
刻む秒針 同じだけれど 顰めて見上げた この空を、
瞬きの中で 変えてゆく。
俯く暇さえ 与えずに、世界の装い 染め上げて、
僕の足を 停めた空。
おいでと 僕を呼んだ声、優しかったのは 何時の日か。
いい子だねと 僕を撫でる手、暖かかったのは 何時の日か。
さぁ、帰ろうと 僕を導くその瞳、穏やかだったのは 何時の日か。
記憶の回顧を 促す西日、駆け足で 去った日々を 呼んでいる。
走馬灯の人生に 気付き始めた 宵の口。
心にぽっかり 穴が開き、隙間風が 沁みるまで、
見えない素振りで 過ごしてた。
立ち止まることを 何処かしら、恐れていたよな、あの日々は、
溢れて弾ける細胞に 突き動かされて いたような。
衝突すら恐れずに、常に何かと 闘うことが、
生きることだと 信じてた。
きっと それは 間違いなんかじゃ ないけれど。
きっと それは 避けて通れぬ 道だった。
歩んだ轍を 消し去る 意味など、
何処には ありはしない事、漸く この頃、気付いた事。
言葉が とても、もどかしい時が、ある。
抱き寄せる腕が とても、ぎこちない時が、ある。
そんな時に ふと、僕は瞳を閉じて 思い出す。
僕に 向けられた あの心優しき 日々の事。
時計が示す 時間より、
心が感じる 時間を選べと、
僕の夕暮れ 告げている。
野辺に佇み 黄昏れて 思いに耽る 時は無く。
此れで五分 と 今より五分。
刻む秒針 同じだけれど 顰めて見上げた この空を、
瞬きの中で 変えてゆく。
俯く暇さえ 与えずに、世界の装い 染め上げて、
僕の足を 停めた空。
おいでと 僕を呼んだ声、優しかったのは 何時の日か。
いい子だねと 僕を撫でる手、暖かかったのは 何時の日か。
さぁ、帰ろうと 僕を導くその瞳、穏やかだったのは 何時の日か。
記憶の回顧を 促す西日、駆け足で 去った日々を 呼んでいる。
走馬灯の人生に 気付き始めた 宵の口。
心にぽっかり 穴が開き、隙間風が 沁みるまで、
見えない素振りで 過ごしてた。
立ち止まることを 何処かしら、恐れていたよな、あの日々は、
溢れて弾ける細胞に 突き動かされて いたような。
衝突すら恐れずに、常に何かと 闘うことが、
生きることだと 信じてた。
きっと それは 間違いなんかじゃ ないけれど。
きっと それは 避けて通れぬ 道だった。
歩んだ轍を 消し去る 意味など、
何処には ありはしない事、漸く この頃、気付いた事。
言葉が とても、もどかしい時が、ある。
抱き寄せる腕が とても、ぎこちない時が、ある。
そんな時に ふと、僕は瞳を閉じて 思い出す。
僕に 向けられた あの心優しき 日々の事。
時計が示す 時間より、
心が感じる 時間を選べと、
僕の夕暮れ 告げている。
月輪の都 『伝信』
2004年10月10日小さな小さな 紙切れに、君への手紙を 書き続け。
高い山に 登り来て、風船 飛ばして 届けと願う。
同じ同じ 文面を、君へと宛てて 書き続け。
広い海に 漕ぎ出して、綺麗な瓶に 詰めては離し。
紅い朱い 墨をすり、君への語りを 書き続け。
渡りを生とす 鳥の脚、そっと取り付け、北の空。
薄暗闇へと 呑まれていった 精霊舟。
祈りの劫火に 呑まれていった あの木札。
眩むような谷底に 呑まれていった 手紙の飛行機。
僕は 何時も 見送るだけで、
この手を離れた その先は、深き心に 祈るしかなくて。
寂しくなるけど、哀しくなるけど、ぐっと 唇噛み締めて、
希望の言葉を 思い浮かべて、祈るだけ。
影膳よそい、語りかける 人のよに。
無理して笑って 見送ろう。
今は誰も、見ては いないから。
風に託した 伝信を、信じ続けて ゆくために。
お元気ですか。 と、一言を。
君の名前で始まって、僕の名前で 終わる文。
お元気ですか。 と、呟きながら。
その一言しか、書けなくて。
お元気ですか。 と、言えなかった 一言を。
出会いから 別れまで、決して 言えなかった、一言を。
高い山に 登り来て、風船 飛ばして 届けと願う。
同じ同じ 文面を、君へと宛てて 書き続け。
広い海に 漕ぎ出して、綺麗な瓶に 詰めては離し。
紅い朱い 墨をすり、君への語りを 書き続け。
渡りを生とす 鳥の脚、そっと取り付け、北の空。
薄暗闇へと 呑まれていった 精霊舟。
祈りの劫火に 呑まれていった あの木札。
眩むような谷底に 呑まれていった 手紙の飛行機。
僕は 何時も 見送るだけで、
この手を離れた その先は、深き心に 祈るしかなくて。
寂しくなるけど、哀しくなるけど、ぐっと 唇噛み締めて、
希望の言葉を 思い浮かべて、祈るだけ。
影膳よそい、語りかける 人のよに。
無理して笑って 見送ろう。
今は誰も、見ては いないから。
風に託した 伝信を、信じ続けて ゆくために。
お元気ですか。 と、一言を。
君の名前で始まって、僕の名前で 終わる文。
お元気ですか。 と、呟きながら。
その一言しか、書けなくて。
お元気ですか。 と、言えなかった 一言を。
出会いから 別れまで、決して 言えなかった、一言を。
月輪の都 『嘲笑』
2004年10月9日口さがない者たちが、声も顕わに 囃子たて、
己を 見失しなうのに 時間はいらぬ。
顔の識別 不能でも、笑う 口元だけが見え、
嘲る声だけ 耳につく。
強く 瞼を 閉ざしても、
この目を 火箸で 突いたとしても、
脳裏に刻む 顔 消えず。
ただただ 己の皮膚を焼く、異臭ばかりが 鼻につき。
両手で耳を 塞いでも、氷柱で鼓膜を 破ぶっても、
脳裏に染み着く 声 消えず。
ただただ 壊死して落ちた、幻痛ばかりが 掌に。
僕は 何に 怯えてる?
正体隠した 陰にも震え、木の葉ずれにも 怖じ気つく。
僕は そんな子供じゃ 無かったのにと、
過去を 探したところで、傷は どこにも 見当たらなくて。
深層心理に 潜っても、医者は 首を 捻るってばかり。
石橋叩いて、渡るのだったら、まだマシで、
叩けば 叩くほどに、疑惑が生じ、首を傾げて 渡らない。
何が そんなに 踏ん切りつかぬ?
何で そんなに 自信がないか?
それが 解れば、苦労はいらぬ。
臆病者だと、卑下して 哂う。
消極的だと、閉ざして 呵う。
他人が指差し、嘲り笑うのではなく、
三日月顔の 仮面は 見知った、己の素顔。
己を 見失しなうのに 時間はいらぬ。
顔の識別 不能でも、笑う 口元だけが見え、
嘲る声だけ 耳につく。
強く 瞼を 閉ざしても、
この目を 火箸で 突いたとしても、
脳裏に刻む 顔 消えず。
ただただ 己の皮膚を焼く、異臭ばかりが 鼻につき。
両手で耳を 塞いでも、氷柱で鼓膜を 破ぶっても、
脳裏に染み着く 声 消えず。
ただただ 壊死して落ちた、幻痛ばかりが 掌に。
僕は 何に 怯えてる?
正体隠した 陰にも震え、木の葉ずれにも 怖じ気つく。
僕は そんな子供じゃ 無かったのにと、
過去を 探したところで、傷は どこにも 見当たらなくて。
深層心理に 潜っても、医者は 首を 捻るってばかり。
石橋叩いて、渡るのだったら、まだマシで、
叩けば 叩くほどに、疑惑が生じ、首を傾げて 渡らない。
何が そんなに 踏ん切りつかぬ?
何で そんなに 自信がないか?
それが 解れば、苦労はいらぬ。
臆病者だと、卑下して 哂う。
消極的だと、閉ざして 呵う。
他人が指差し、嘲り笑うのではなく、
三日月顔の 仮面は 見知った、己の素顔。
月輪の都 『恋心1/3』
2004年10月6日割り切れなさが 分数さ。
やれきれなさが 3なのさ。
丁度に割れない 曖昧さ。
名付けて これを、恋心。
パーセンテージじゃ 色気ない。
ほのかに桃色 気分じゃないか。
気になり始めて どれくらい?
視線の隅に かかり始めて どれくらい?
ほんの一歩 だけだけど、一線越えて どれくらい?
頭一つの 差なんだけどね。
裏腹心の 奇妙さは、はまってみないと わからない。
おっと!マジに 見つめたところで、
不可解なのは 同じだけどね。
熟した果実は 甘いけど、青い果実は えぐいけど。
どっちも 好みの 問題だよね。
きっと今は その間。
煮えきらなさが 分けた数の、恋心。
微かに ときめき、ちくりと 痛い。
頬を赤らめ、うわずる ほんの一歩前。
君を 見知って いるけれど、
君が 誰かも 知らないような。
自然に 会話 交わすけど、
世間話や 相づちで、踏み込む事は ないような。
うるさくは ない程度、いつも 視界に小さく写る。
切なさなんかは 感じない。
愛しさなんかも 感じない。
ただ ほんの 少しだけ、「お!」と思う、程度の事さ。
テレビで流れる 事件のように。
紙面を賑わす 醜聞のように。
繰り返してまで、思い返す ことは無い。
やれきれなさが 3なのさ。
丁度に割れない 曖昧さ。
名付けて これを、恋心。
パーセンテージじゃ 色気ない。
ほのかに桃色 気分じゃないか。
気になり始めて どれくらい?
視線の隅に かかり始めて どれくらい?
ほんの一歩 だけだけど、一線越えて どれくらい?
頭一つの 差なんだけどね。
裏腹心の 奇妙さは、はまってみないと わからない。
おっと!マジに 見つめたところで、
不可解なのは 同じだけどね。
熟した果実は 甘いけど、青い果実は えぐいけど。
どっちも 好みの 問題だよね。
きっと今は その間。
煮えきらなさが 分けた数の、恋心。
微かに ときめき、ちくりと 痛い。
頬を赤らめ、うわずる ほんの一歩前。
君を 見知って いるけれど、
君が 誰かも 知らないような。
自然に 会話 交わすけど、
世間話や 相づちで、踏み込む事は ないような。
うるさくは ない程度、いつも 視界に小さく写る。
切なさなんかは 感じない。
愛しさなんかも 感じない。
ただ ほんの 少しだけ、「お!」と思う、程度の事さ。
テレビで流れる 事件のように。
紙面を賑わす 醜聞のように。
繰り返してまで、思い返す ことは無い。
月輪の都 『実無花』
2004年10月3日どんなに 綺麗に 咲いたとしても、実を結ばぬ 花だから。
どれだけ 寡黙に 耐え忍んでも、未だ結ばぬ 花だから。
花と産まれた筈だけど、それは見かけに 過ぎなくて。
花と産まれる以前には、命と産まれた 筈なのに。
風雪越えて 咲く花の、孤独は誰も 知らぬまま。
氷の飛礫に 身を晒し、来ない春を 待ち望む。
ふくら雀が 宿り木に、枝葉に羽を 休めても、
私を啄ばみ、喰いはせず。
ささやかながらも 命を営み、凛と花弁を 伸ばしても、
継いで残せぬ この身を嘆く。
決して 馴染まぬ 銀色の、冷たい道具が 突き刺さる。
細い 細い 硝子の管が、私の一部を 切り取って、
冬より冷たい 箱の中。
実を結ばぬ 空洞は、涙ばかりを 流して終わる。
色を持たない 涙など、とうに 枯れてしまったけれど、
血色の悲しみ、果てはせぬ。
この世に 残して逝き去る 哀しみあれば、
この世に 残せず生きゆく 苦しみあると、
この世の 人は幾人が 陶器の花を知るだろか。
深い深い 花弁の色は、私が 抱えた 血の涙。
堅く鋭い 茨の棘は、私が 纏った 心の鎧。
諦めきれない一線が、時間ばかりに 追われて迫る。
私を 花と 見る前に、私を 命と 見て欲しい。
どれだけ 寡黙に 耐え忍んでも、未だ結ばぬ 花だから。
花と産まれた筈だけど、それは見かけに 過ぎなくて。
花と産まれる以前には、命と産まれた 筈なのに。
風雪越えて 咲く花の、孤独は誰も 知らぬまま。
氷の飛礫に 身を晒し、来ない春を 待ち望む。
ふくら雀が 宿り木に、枝葉に羽を 休めても、
私を啄ばみ、喰いはせず。
ささやかながらも 命を営み、凛と花弁を 伸ばしても、
継いで残せぬ この身を嘆く。
決して 馴染まぬ 銀色の、冷たい道具が 突き刺さる。
細い 細い 硝子の管が、私の一部を 切り取って、
冬より冷たい 箱の中。
実を結ばぬ 空洞は、涙ばかりを 流して終わる。
色を持たない 涙など、とうに 枯れてしまったけれど、
血色の悲しみ、果てはせぬ。
この世に 残して逝き去る 哀しみあれば、
この世に 残せず生きゆく 苦しみあると、
この世の 人は幾人が 陶器の花を知るだろか。
深い深い 花弁の色は、私が 抱えた 血の涙。
堅く鋭い 茨の棘は、私が 纏った 心の鎧。
諦めきれない一線が、時間ばかりに 追われて迫る。
私を 花と 見る前に、私を 命と 見て欲しい。
月輪の都 『しるし』
2004年9月30日答えが欲しいと、請い願う。
両の掌 痛いほど。
応えて欲しいと 臥し祈る。
頭を垂れて 眼を閉じて。
己の魂 掛けてまで 挑みたい 事がある。
己の魂 欠けてでも 成し遂げたい 事がある。
己の魂 賭けるほど 切に望む 事がある。
自力で到達できるなら、何を捨てても 行くだろう。
自力で成就できるなら、何を得ずとも 行くだろう。
あくまで自力本願で、最期の運ばかりは 天命であるように、
自力で どうにもならない事が 望みであるならば、
こうして ただ ただ 願うのみ。
過去に 数多の人の群れ、夢見て旅立つ その道を。
今も 幾多の方法論、乱立しても、確証無くて。
性差に苦しむ 事もある。
けれど、それは人の法。
狭い範疇などになぞ、捕らわれている 暇は無い。
心に刻んで 行く道は、遥かに険しく、遥かに高く。
心に覚えて 行く道は、遥かに深く、遥かに広く。
心に抱いて 行く道は、遥かに明るく、遥かに闇く。
肉体が 憶えた感触では 語れない。
モノであって、物でなし。
精神が 視覚で 捉えられないように。
形を為さぬが 在るモノを、否定など 出来はしない。
息づく肉体 燃えるなら、宿る魂 燃やす術(すべ)。
きっと、其処に あるのだろう。
だから、どうぞ、答えて欲しい。
私が この道、往けるかを。
しるしを この身に 刻みたまえ。
両の掌 痛いほど。
応えて欲しいと 臥し祈る。
頭を垂れて 眼を閉じて。
己の魂 掛けてまで 挑みたい 事がある。
己の魂 欠けてでも 成し遂げたい 事がある。
己の魂 賭けるほど 切に望む 事がある。
自力で到達できるなら、何を捨てても 行くだろう。
自力で成就できるなら、何を得ずとも 行くだろう。
あくまで自力本願で、最期の運ばかりは 天命であるように、
自力で どうにもならない事が 望みであるならば、
こうして ただ ただ 願うのみ。
過去に 数多の人の群れ、夢見て旅立つ その道を。
今も 幾多の方法論、乱立しても、確証無くて。
性差に苦しむ 事もある。
けれど、それは人の法。
狭い範疇などになぞ、捕らわれている 暇は無い。
心に刻んで 行く道は、遥かに険しく、遥かに高く。
心に覚えて 行く道は、遥かに深く、遥かに広く。
心に抱いて 行く道は、遥かに明るく、遥かに闇く。
肉体が 憶えた感触では 語れない。
モノであって、物でなし。
精神が 視覚で 捉えられないように。
形を為さぬが 在るモノを、否定など 出来はしない。
息づく肉体 燃えるなら、宿る魂 燃やす術(すべ)。
きっと、其処に あるのだろう。
だから、どうぞ、答えて欲しい。
私が この道、往けるかを。
しるしを この身に 刻みたまえ。
月輪の都 『日留子』・ひるこ・
2004年9月27日闇喰う神よ 産まれ出よ。
原始混沌 光も飲み込む 闇が占め、
あまたの神の産みし国。
力尽きて 飲まれて消えた。
日出ずる神よ いでよ。
淡い闇なら 飲まれはせぬ。
日留子(ひるこ)が闇を 食らうから。
闇を食らいし神はゆく、常に一歩先をゆく。
喰らい喰らいて、混沌が 僅か薄くなってから、
照らす神が 現れて、漸く光を放つ頃、
泥は固まり 国となる。
日留子に眼が 要らぬのは、その眼で混沌 見ぬように。
耳が 無いのは、竦む呻きを 聞かぬよう。
鼻が 無いは、流行る腐臭を 嗅が無いように。
言葉が 無いのは、要らぬ返事を せぬように。
手足が 無いのは、もがれぬように。
色が 無いのは、染まらぬように。
光さえも 呑み込み滅す 闇は畏怖。
蠢く渦を抱えて 広がる闇は 終始。
時の流れさえも 吸い込む 闇は貪欲。
留まる事すら 許されず。
せめて命が 在れるよう、闇を薄く 喰い給え。
せめて光が 在れるよう、闇よ 動きを 鈍らせ給え。
原始混沌 光も飲み込む 闇が占め、
あまたの神の産みし国。
力尽きて 飲まれて消えた。
日出ずる神よ いでよ。
淡い闇なら 飲まれはせぬ。
日留子(ひるこ)が闇を 食らうから。
闇を食らいし神はゆく、常に一歩先をゆく。
喰らい喰らいて、混沌が 僅か薄くなってから、
照らす神が 現れて、漸く光を放つ頃、
泥は固まり 国となる。
日留子に眼が 要らぬのは、その眼で混沌 見ぬように。
耳が 無いのは、竦む呻きを 聞かぬよう。
鼻が 無いは、流行る腐臭を 嗅が無いように。
言葉が 無いのは、要らぬ返事を せぬように。
手足が 無いのは、もがれぬように。
色が 無いのは、染まらぬように。
光さえも 呑み込み滅す 闇は畏怖。
蠢く渦を抱えて 広がる闇は 終始。
時の流れさえも 吸い込む 闇は貪欲。
留まる事すら 許されず。
せめて命が 在れるよう、闇を薄く 喰い給え。
せめて光が 在れるよう、闇よ 動きを 鈍らせ給え。
月輪の都 『赤い闘士』
2004年9月24日僕と君との距離、こんなに近くて こんなに遠い。
わかりあえたら いいのにね。
僕と君との 食い違い、こんなに些細で こんなに重大。
ゆずりあえたら いいのにね。
君と僕だけの世界なら、同じものだけ 見てられるのにね。
そんな風に 僕たちは、互いの視野を 狭めてる。
そんな風に 僕たちは、互いの距離を 縮めてた。
赤い糸は 運命の、手繰る道筋なんかじゃないと、
気付きもしないで 酔いしれて。
赤い糸は 戒めの、鎖であると気付かずに、
甘い夢だけ 食べていた。
僕と君が 重なれば、一つになれると 勘違い。
君とこうして 手を繋ぎ、互いに 見合わせ 微笑んで、
互いに 鋏を 隠してた。
ちょきん と切れば、終わりだと。
自身に幾度も 言い聞かせ、眼を離した瞬間に、
力をいれよと 考えながら、
背中に鋏を 隠したままで、捨てることは 出来なくて。
愛を無くして 情けでも。
愛を捨てて 恨みでも。
愛を探して 裏切って、愛を欲して 未練でも。
互いの手首を 手錠のように、赤い糸が繋ぐから、
尖った刃先を 握り締め、互いに躊躇い、突き刺しあって。
やがて どちらか 地に臥すまでも。
自分を突き刺す 発想なんて、とても 考えつかぬほど。
僕は 君は 赤い呪縛に 囚われていた。
わかりあえたら いいのにね。
僕と君との 食い違い、こんなに些細で こんなに重大。
ゆずりあえたら いいのにね。
君と僕だけの世界なら、同じものだけ 見てられるのにね。
そんな風に 僕たちは、互いの視野を 狭めてる。
そんな風に 僕たちは、互いの距離を 縮めてた。
赤い糸は 運命の、手繰る道筋なんかじゃないと、
気付きもしないで 酔いしれて。
赤い糸は 戒めの、鎖であると気付かずに、
甘い夢だけ 食べていた。
僕と君が 重なれば、一つになれると 勘違い。
君とこうして 手を繋ぎ、互いに 見合わせ 微笑んで、
互いに 鋏を 隠してた。
ちょきん と切れば、終わりだと。
自身に幾度も 言い聞かせ、眼を離した瞬間に、
力をいれよと 考えながら、
背中に鋏を 隠したままで、捨てることは 出来なくて。
愛を無くして 情けでも。
愛を捨てて 恨みでも。
愛を探して 裏切って、愛を欲して 未練でも。
互いの手首を 手錠のように、赤い糸が繋ぐから、
尖った刃先を 握り締め、互いに躊躇い、突き刺しあって。
やがて どちらか 地に臥すまでも。
自分を突き刺す 発想なんて、とても 考えつかぬほど。
僕は 君は 赤い呪縛に 囚われていた。
月輪の都 『前線』
2004年9月23日右を見れば 赤い夜。
左を見れば 白い夜。
間を繋ぐ 夜は灰色、混ざり合い。
赤い夜から 大粒の激しい 雨音 やって来る。
白い夜へは 腹に響く雷音 矢次 やって来る。
空を渡る 前線が、逃げる時さえ 与えずに、
震える体に 襲い来る。
上を見れば 悲しい夜。
下を見れば 苦しい夜。
間に転がる 夜は欲の色、情と愛が せめぎ合い。
悲しい夜には 溢れる涙を 零すなと。
苦しい夜には 装いばかりの 返事を返せと。
体を渡る 列は常に 数珠繋ぎ、独りの時が 怖いから、
凍える体に 肉布団。
予測の付かない モノばかり。
天災だって、恋愛だって、何一つ、確証なんて、ありはしない。
だけど、予知が可能になったって、根本的には 解消なんてされないじゃない?
取れるものは 対策だけさ。
出来ることは 慰めだけさ。
手にするものは 諦めだけかも、しれないね。
左を見れば 白い夜。
間を繋ぐ 夜は灰色、混ざり合い。
赤い夜から 大粒の激しい 雨音 やって来る。
白い夜へは 腹に響く雷音 矢次 やって来る。
空を渡る 前線が、逃げる時さえ 与えずに、
震える体に 襲い来る。
上を見れば 悲しい夜。
下を見れば 苦しい夜。
間に転がる 夜は欲の色、情と愛が せめぎ合い。
悲しい夜には 溢れる涙を 零すなと。
苦しい夜には 装いばかりの 返事を返せと。
体を渡る 列は常に 数珠繋ぎ、独りの時が 怖いから、
凍える体に 肉布団。
予測の付かない モノばかり。
天災だって、恋愛だって、何一つ、確証なんて、ありはしない。
だけど、予知が可能になったって、根本的には 解消なんてされないじゃない?
取れるものは 対策だけさ。
出来ることは 慰めだけさ。
手にするものは 諦めだけかも、しれないね。
月輪の都 『脱兎』・月の兎・
2004年9月21日無くしてしまったものが 何なのか。
忘れてしまったものが 何なのか。
三歩戻ってみたけれど、立ち尽くして 終わってる。
思い出せない 記憶の底が、奈落のように 真っ暗で、
静まり返って いるから 不安。
取り留めない事、雑多な記憶。
耳にこだます 渦巻く騒音、拭えないから、もどかしい。
きっと たいしたことじゃない、自分に自身に 言い聞かせ、
振り返る ことからいつも 逃げている。
非難の声も届かない、指差す人も居ないとこ、
目指して走った、一目散。
果てない階段 俯いて、独り 登る 夜明け前。
果てない階段 俯き下る、足元見えぬ 真夜中に。
月に兎が 居た頃は、眠れる夜が あったろう。
川に河童が 居た頃は、微睡む昼が あったろう。
森に物の怪 居た頃は、カラスと帰る夕暮れが、
そこかしこに あったろう。
山に木霊が 居た頃は、心を洗う朝が、
きっとここに あったろう。
兎は 何処(どこ)かに 姿を消した。
河童は 何処(いずこ)に 旅立った。
物の怪 此処(ここ)より 追われて去った。
木霊は 其処(そこ)から 逃げ延びた。
いまさら 何を 尊べと?
いまさら 何を 畏れよと?
いまさら 何を 信じよと?
開けてはいけない 扉を壊し、文字を綴った知識を 抱え、
紐解く喜び 追い求め、愚者を扇動 導いて、
いざいざゆかん 行軍を。
うねり飲み込む 白波の元へ、断崖絶壁 飛び降りよ。
いっそ 知らない 言葉なら、覚える事も ないのにね。
いっそ 見えない 現実ならば、覚える事も ないのにね。
大切だった事さえも、思い出せない 日々の渦。
大事だった事さえも、思いつかない 鈍った一瞬。
撥ねた兎の 背中を 追って、
残した足跡、雪の上。
少ぉし先で 振り返り、決して届く 事がない。
忘れてしまったものが 何なのか。
三歩戻ってみたけれど、立ち尽くして 終わってる。
思い出せない 記憶の底が、奈落のように 真っ暗で、
静まり返って いるから 不安。
取り留めない事、雑多な記憶。
耳にこだます 渦巻く騒音、拭えないから、もどかしい。
きっと たいしたことじゃない、自分に自身に 言い聞かせ、
振り返る ことからいつも 逃げている。
非難の声も届かない、指差す人も居ないとこ、
目指して走った、一目散。
果てない階段 俯いて、独り 登る 夜明け前。
果てない階段 俯き下る、足元見えぬ 真夜中に。
月に兎が 居た頃は、眠れる夜が あったろう。
川に河童が 居た頃は、微睡む昼が あったろう。
森に物の怪 居た頃は、カラスと帰る夕暮れが、
そこかしこに あったろう。
山に木霊が 居た頃は、心を洗う朝が、
きっとここに あったろう。
兎は 何処(どこ)かに 姿を消した。
河童は 何処(いずこ)に 旅立った。
物の怪 此処(ここ)より 追われて去った。
木霊は 其処(そこ)から 逃げ延びた。
いまさら 何を 尊べと?
いまさら 何を 畏れよと?
いまさら 何を 信じよと?
開けてはいけない 扉を壊し、文字を綴った知識を 抱え、
紐解く喜び 追い求め、愚者を扇動 導いて、
いざいざゆかん 行軍を。
うねり飲み込む 白波の元へ、断崖絶壁 飛び降りよ。
いっそ 知らない 言葉なら、覚える事も ないのにね。
いっそ 見えない 現実ならば、覚える事も ないのにね。
大切だった事さえも、思い出せない 日々の渦。
大事だった事さえも、思いつかない 鈍った一瞬。
撥ねた兎の 背中を 追って、
残した足跡、雪の上。
少ぉし先で 振り返り、決して届く 事がない。
月輪の都 『風連』
2004年9月20日雨を呼ぶ 風が吹く。
湿気を含んだ 大気の中に、冷気を孕んだ 一迅の風。
此処へ 雨を 運ぶ先触れ、汗ばむ頬を 掠めて通り過ぎ。
それは そぼ降る ささめの雨か。
それは 総てを打ちのめす 飛礫の雨か。
今は 知りようも ないけれど。
津波を呼ぶ 風が吹く。
粘度を孕む 纏わりつくよな、潮の香りを 含んだ浜風。
此処へ 津波を 呼ぶように、彼方の海より 陸へと昇る。
それは 寄せては返す 静かな波か。
それは 総てを 飲み込む 悪食の波か。
今は 知りようも ないけれど。
雪崩を呼ぶ 風が吹く。
凍気を含む 切り裂くような、視界を遮る 吹雪を連れて。
此処へ 雪崩を 呼ぶように、一瞬 無音に 静まり返る。
それは 安堵をもたらす 終焉の合図となるか。
それは 大地を揺るがす 唸りの地鳴りとなるか。
今は 知りようも ないけれど。
僕は 私は、何を待つ。
僕に 私に、向かう風。
僕を 私を、起点に起これ、竜巻よ。
僕と 私と、連れ立ち 往こう。
僕が 私が、指差す先に、流れて走れ、疾風よ。
時の流れと 同じよに、色も形も 見せぬまま、
僕の 私の、肌のみぞ知る。
湿気を含んだ 大気の中に、冷気を孕んだ 一迅の風。
此処へ 雨を 運ぶ先触れ、汗ばむ頬を 掠めて通り過ぎ。
それは そぼ降る ささめの雨か。
それは 総てを打ちのめす 飛礫の雨か。
今は 知りようも ないけれど。
津波を呼ぶ 風が吹く。
粘度を孕む 纏わりつくよな、潮の香りを 含んだ浜風。
此処へ 津波を 呼ぶように、彼方の海より 陸へと昇る。
それは 寄せては返す 静かな波か。
それは 総てを 飲み込む 悪食の波か。
今は 知りようも ないけれど。
雪崩を呼ぶ 風が吹く。
凍気を含む 切り裂くような、視界を遮る 吹雪を連れて。
此処へ 雪崩を 呼ぶように、一瞬 無音に 静まり返る。
それは 安堵をもたらす 終焉の合図となるか。
それは 大地を揺るがす 唸りの地鳴りとなるか。
今は 知りようも ないけれど。
僕は 私は、何を待つ。
僕に 私に、向かう風。
僕を 私を、起点に起これ、竜巻よ。
僕と 私と、連れ立ち 往こう。
僕が 私が、指差す先に、流れて走れ、疾風よ。
時の流れと 同じよに、色も形も 見せぬまま、
僕の 私の、肌のみぞ知る。
月輪の都 『海渡の月』・ウラシマ タロウ・
2004年9月19日天空 切り立つ 山を越え、道を残さぬ 密林を抜け、
阻む大河を 渡り来て、眼下に望む大地の果てに、
ようやく 立てた海渡の時。
沈む夕日に 両手を挙げて、迫る時を いざ呼ばん。
満ちたる月夜 凪の海。
遥か深海 龍の宮、路よ開けと 焔を掲げ、
珊瑚の鳥居は 異界の扉、
此処へ 路よ繋がれと、喉を裂いて 祈り呼ぶ。
海鳴り呼んで 風が来る。
幾百の時を 閉じ込めた、海底よりの 使者が来る。
玉手の箱を 携えて、質の御霊 昇り来る。
虚ろの体を 引きずって、千里 万里を 彷徨い続け、
空と地上が交わる地、遥かな頂き聖山に、
浄化を終えた 穢れを捨てに 行ってきた。
此処で 私の旅も終焉、役目を終えて、
ようやく没する 時を得る。
地上の民人たちは皆、大海原に祈りを捧げ、
清めの神に 穢れを託し、
祓いを 終えたと、安堵する。
知らず知らずの 積み重ね、
犠牲の上に 成り立つ生を、
想いも反さず、眼を瞑る。
ふつりふつりと 怒りが 産まれ、
凝りて固まる 恨みが 膨れ、
拭い去れない 念となり。
人は穢れを 消し去れぬ。
それは 人で 在るが為。
呪いを 恨みを 災いを、その心の闇で、産むが為。
私が逝った 竜宮は、遥かな海底、果ての国。
私が触れた 海亀は、人が流した 穢れの塊。
私が逢った 乙姫は、哀れな姿で 浄めを続け。
私が背負った 宿命は、人が還せる 最期の恩義。
恨み終い給え、と 私は 名乗り、継がれるだろう。
阻む大河を 渡り来て、眼下に望む大地の果てに、
ようやく 立てた海渡の時。
沈む夕日に 両手を挙げて、迫る時を いざ呼ばん。
満ちたる月夜 凪の海。
遥か深海 龍の宮、路よ開けと 焔を掲げ、
珊瑚の鳥居は 異界の扉、
此処へ 路よ繋がれと、喉を裂いて 祈り呼ぶ。
海鳴り呼んで 風が来る。
幾百の時を 閉じ込めた、海底よりの 使者が来る。
玉手の箱を 携えて、質の御霊 昇り来る。
虚ろの体を 引きずって、千里 万里を 彷徨い続け、
空と地上が交わる地、遥かな頂き聖山に、
浄化を終えた 穢れを捨てに 行ってきた。
此処で 私の旅も終焉、役目を終えて、
ようやく没する 時を得る。
地上の民人たちは皆、大海原に祈りを捧げ、
清めの神に 穢れを託し、
祓いを 終えたと、安堵する。
知らず知らずの 積み重ね、
犠牲の上に 成り立つ生を、
想いも反さず、眼を瞑る。
ふつりふつりと 怒りが 産まれ、
凝りて固まる 恨みが 膨れ、
拭い去れない 念となり。
人は穢れを 消し去れぬ。
それは 人で 在るが為。
呪いを 恨みを 災いを、その心の闇で、産むが為。
私が逝った 竜宮は、遥かな海底、果ての国。
私が触れた 海亀は、人が流した 穢れの塊。
私が逢った 乙姫は、哀れな姿で 浄めを続け。
私が背負った 宿命は、人が還せる 最期の恩義。
恨み終い給え、と 私は 名乗り、継がれるだろう。
月輪の都 『矛先』
2004年9月17日しゃらり しゅらり 命を込めて、
しゃりり しゅりり 光を反す。
波乱の形を 浮かべて沈む、刃は言葉を遮って、
揺らめく焔を 映して消える、
鈍い眼の光を 追って、移して消える。
劫火の中より 生まれでて、火花を敵に 鍛えられ、
氷の中で 唸り声。
私を置いて 旅立つ子。
心配無用と 肩越しに、たった一度 振り返り、
微笑む若武者 霞む視界に 凛と立ち。
形見の刀を 携えて、無傷の鎧 豪々しくも、
初陣の証、間違う事なきや。
ああ、けれど。
ああ、されど。
諸刃の刃の 意味を知れ。
知りて 刃を 向けてみよ。
覚悟が そこに 有るのなら。
護る為でも 奪う為でも 結果は同じ。
刃を握り 構えるならば、同じ罪を 背負うこと。
大義名分 繕うたとて、殺める業は 消し去れぬ。
自己を犠牲にせよ、とは 云わぬ。
けれど、他人を犠牲にせよ、とも云わぬ。
どちらも盾で、どちらも矛。
常に 鏡と覚えて、おゆき。
鞘から抜かれた 刃は今、己に還って 引き裂く痛み。
白光 反す その刃、深く己に 突き立つと。
しゃらり しゅらり 命を込めて、
しゃりり しゅりり 光を反す。
しゃりり しゅりり 光を反す。
波乱の形を 浮かべて沈む、刃は言葉を遮って、
揺らめく焔を 映して消える、
鈍い眼の光を 追って、移して消える。
劫火の中より 生まれでて、火花を敵に 鍛えられ、
氷の中で 唸り声。
私を置いて 旅立つ子。
心配無用と 肩越しに、たった一度 振り返り、
微笑む若武者 霞む視界に 凛と立ち。
形見の刀を 携えて、無傷の鎧 豪々しくも、
初陣の証、間違う事なきや。
ああ、けれど。
ああ、されど。
諸刃の刃の 意味を知れ。
知りて 刃を 向けてみよ。
覚悟が そこに 有るのなら。
護る為でも 奪う為でも 結果は同じ。
刃を握り 構えるならば、同じ罪を 背負うこと。
大義名分 繕うたとて、殺める業は 消し去れぬ。
自己を犠牲にせよ、とは 云わぬ。
けれど、他人を犠牲にせよ、とも云わぬ。
どちらも盾で、どちらも矛。
常に 鏡と覚えて、おゆき。
鞘から抜かれた 刃は今、己に還って 引き裂く痛み。
白光 反す その刃、深く己に 突き立つと。
しゃらり しゅらり 命を込めて、
しゃりり しゅりり 光を反す。
月輪の都 『散華』
2004年9月15日君の渡りを 祝う為。
君の姿を 彩る餞(はなむけ)。
山河の息吹を 閉じ込めた、使者は幾重に 重なりながら
くるりくるりと 宙を舞い、
はらりはらりと 地上に積もる。
君の前に 踊り来て、君の後ろに 踊りゆく。
君の頭上で 花開き、君の足元飾る道。
祈りの日々へ 行く君に、祝いの散華 艶やかに、
隠した涙も 寂しさも、君は御簾の向こう側。
そっと袖を濡らすだろ。
朧な願いが 時を経て、霞と消える事もある。
綺羅と光る溜息が、氷の飛礫に姿を変えて、
降りて積もる事もある。
衆生の願いを 背(せな)に負い、
己の願いを 心に秘めて、
両手に供物、両の足に 決意を掲げ、
理(ことわり)の主(ぬし)へと 歩み渡る道。
地上を統べる主の元、海原統べる主の元、天空統べる主の元。
一縷の望みに 願いをかけて、縋るその手を 断ち切れなくて。
君は行く往く、斎(いつき)の祝詞。
君は逝く去く、人柱。
誓い願う結晶よ、降りて流れる 華となれ。
君が発つその時に、啼いて祝う 刹那の華よ、
見事 輝き、舞い給え。
くるくる回る 万華鏡、お伽の国に 彼の人を、
導き給えと、眼を閉じる。
嘆きは 伏せて、微笑みを。
行くなの言葉を 飲み込んで、ご健在にと 言葉を紡ぐ。
君の眼(まなこ)よ、真(まこと)を 見るな。
君の想いよ、真なれ。
散華よ 今は 高らかに、
雅の夢と 残し逝け。
君の姿を 彩る餞(はなむけ)。
山河の息吹を 閉じ込めた、使者は幾重に 重なりながら
くるりくるりと 宙を舞い、
はらりはらりと 地上に積もる。
君の前に 踊り来て、君の後ろに 踊りゆく。
君の頭上で 花開き、君の足元飾る道。
祈りの日々へ 行く君に、祝いの散華 艶やかに、
隠した涙も 寂しさも、君は御簾の向こう側。
そっと袖を濡らすだろ。
朧な願いが 時を経て、霞と消える事もある。
綺羅と光る溜息が、氷の飛礫に姿を変えて、
降りて積もる事もある。
衆生の願いを 背(せな)に負い、
己の願いを 心に秘めて、
両手に供物、両の足に 決意を掲げ、
理(ことわり)の主(ぬし)へと 歩み渡る道。
地上を統べる主の元、海原統べる主の元、天空統べる主の元。
一縷の望みに 願いをかけて、縋るその手を 断ち切れなくて。
君は行く往く、斎(いつき)の祝詞。
君は逝く去く、人柱。
誓い願う結晶よ、降りて流れる 華となれ。
君が発つその時に、啼いて祝う 刹那の華よ、
見事 輝き、舞い給え。
くるくる回る 万華鏡、お伽の国に 彼の人を、
導き給えと、眼を閉じる。
嘆きは 伏せて、微笑みを。
行くなの言葉を 飲み込んで、ご健在にと 言葉を紡ぐ。
君の眼(まなこ)よ、真(まこと)を 見るな。
君の想いよ、真なれ。
散華よ 今は 高らかに、
雅の夢と 残し逝け。