僕は 記憶に、支配される。
どんなに強い、進行形の記録が、僕を 矯正しようとも、
反芻して、脳裏に 刻み込まれた、記憶が僕を、支配する。

どんなに熱い、言葉を僕に 注いでくれても、
繰り返して 焼き付けられた 記憶が僕を、支配する。

じんわり浸透する、僕に優しい 出来事も、
柔かな 癒しの言葉でも、表面的な 薬でしかないのだと、
根治不能な 病の様に、じっと影を 潜めて 沈む。

恐怖に怯えた 記憶は時に、
突如、返り鮮やかに、今在る如きに 目前で翻る。
瞬間的に 覚えた恐怖より、じわりと時間を掛けて、
感じた恐怖は、消せる事は無い。

実体験と、深い思考と、感情は、
より強い 記憶となって、
まるで 癌細胞の様に、弊害を齎す。
閃光伴う 映像は、実像よりも鮮烈で、
編集された分だけ的確。

感情が 加味されれば 改竄を、
全体像が ぼやければ、濃縮を、
繰り返す事で 洗脳を。

忘れたい 事実だのに、消せない 記憶となって蔓延る、
半永久的保存の記録。

悪夢は 性能の良すぎた 保管庫。
忌むべきは、お節介な 編集機能。
笑える変換だった頃の方が、マシだったのにね。
真剣すぎて 笑えない。
目覚めない。
薄ぼんやりと、虚ろな時間。
定刻通りに 睡夢を抜けて、朝の支度を 済ませたけれど、
意識の半分、閉ざしてる。

習慣づいた行動を、無難にこなして いるけれど、
どうして、薄靄 晴れないままに、刻限 正午を指している。
だのに、瞼を 閉じても、臥せっても、
実のある眠りに 付けぬよう。

奇妙な違和感、抜けきれず。
違う私が、何時ものように、平常どおり 動いてる。
軽い浮遊感、ふわふわり。
眠りの前後の 心地のように、ゆらゆら意識が 漂って、
紙の上に、不思議な線が。

目覚めない。
篭った時間を 擦り抜けて、席を立って 一呼吸。
朝から続く、雨模様、余計に眠気を 誘うのか、
魔の刻限も、ひとしおに、私を掴んで 離さない。
剥き出しの 愛情は、溶岩流。
灼熱の唸りは、抗う声すら、飲み込んで。

剥き出しの 感情は、荒ぶる狂風。
不動の山とて、鳴動し、身をもがれて、礫と化す。

剥き出しの 欲望は、海淵の底。
何処までも 引き摺り込んで、押し潰す。

剥き出しの 願望は、隕石弾。
逃げ惑う 猶予すら、与えず注ぐ、砕破の矢。

剥き出しの 言ノ葉は、万年の氷壁。
醸す凍気は、不落の障壁、盾なる矛。

剥き出しの 敵意は、大海嘯。
拡がる裾野を 呼び寄せ 膨れ、空を覆う 波頭。

剥き出しの 呪念は、雪崩砲。
春陽の侵食、積重連れて、白き闇に 閉ざしゆく。
言葉の剣を、真綿で包み、間という鞘に 納めたら、
腰に 提げるは、戒めと。

帯刀 得るは、拠り所。
抜刀 せざるも、拠り所。

己が信念、削りだし、我が心の剣と 鍛えよと、
鞘を与えた 人ぞ告ぐ。

竹光ならば、尚の事。
真剣ならば、尚の事。
空剣ならば、尚の事。

忘れえじと、囁く声を、逃がさぬように。
踊るなかれと、律する声を、厭わぬように。
己は 独りで 立てぬ事を 知るように。

何気の無い 優しさが、吾が身に 染みた時がある。
何気の無い 励ましが、そっと背中を 撫でた時がある。
何気ない 気遣いが、無性に温かく 感じた時がある。

己が 独りで ない事を 知る。

抜き差し 封じた、刀を腰に 提げて行くは、己が道。
受けた恩を 心に刻み、与える恩を 心に描け。
癒された想いを 胸に、援ける想いを 向けるべし。

己を 独りで 終らせぬように。
紅い月を、恐いと告げる、君の瞳も 兎の目。
泣き腫らす程に、君は何を 思いつめ、
どうして 声を殺して、泣くのだろ。

蒼い月を、あな いみじと零す、君の頬も 蒼白の。
冴え凍る 夜気に打たれて 佇んで。
竦みながらも 睨む目を、どうして 抱えて、哭くのだろ。

金の月を、眩しいと、君は 斜に構えて 顔背け。
同じ色を 湛えた その髪は、更なる輝き 波打って、
それでもどうして、受入がたしと 吐くのだろ。

銀の月を、厭わしと、逃れきれない、君の心は 悔恨を。
貫く刃を 背に受けて、払う腕も 突き刺され、
どうして 君は、幻の 墓標を探して いるのだろ。

茜の月に、不安を 覚えた君は、薄い夜空を 見渡すままに。
見慣れた風景、違和感 求め。
どうして、不吉な 趣、引き寄せる。

紫の月に、疑う眼を 瞬く君は、終焉 口に、溜息を。
確たる安堵の 域など無い、を、知り得ても、
どうして 欲する、想いを 拭えぬままに あるのだろ。

少しう 遠く、遥かに 近く。
君の傍ら、その背にそっと、寄りて 添うて おりしがな。
君は 見しとは せざるまま、揺らぎに酔うて、酒盛りを。
君は 閉ざして、俯いて、余韻に 溺れて、杯を。

不変の月を 観んとせむ。
普遍の月を 受くとせむ。

伸べて 転がす掌(たなこごろ)。
さりとて何も とどまらぬ。

月輪の都 『渦』

2005年7月1日
今でも、思い出すと、涙が滲む、
昇華されない 記憶を幾つ、
貴方は 抱えて 居るのでしょう。

辛い痛みを 捨てきれないのは 何故でしょう。

手放したくない 気持ちが何処か、
そっと隠れて 居るのでしょう。

過酷な事実を 美化する事の、
真意は 何処に、あるのでしょう。
残酷な記憶を 美化する事の、
本意は 何処に、あるのでしょう。
悲哀の経験を 美化する事の、
大義は 何処に、あるのでしょう。

記しきれない 心の様は、
顕しきれない 心の性は、
描ききれない 心模様。

押さえきれない 心の揺れは、
追いかけきれない 心の動き。

法則 無視した、振り子の様に、
逆流 始めた、砂時計。

時は これ程、流れ去り、姿は老いて、変わり果て、
湧いた蟲が 記憶を喰い散らして ゆくのにね。

何時か、機能が停止して、炎の中で 焼かれたら、
すべてのものは 消え去るだろか。

終末迎える 肉体の、則も性も 受け入れて、
怖さは 微塵も ないのだけれど、
同時に 必ず、私の心もすべて、消え去って くれるのだろか。

残る事が 恐ろしい。
遺す事が 恐ろしい。

何故なら、今でも こういう風に、
消し去る 術を 持たぬから。

日輪の郷 『猫』

2005年6月30日
甘えたいから、傍にいて。
独りがいいから、出て行って。
寂しいから、すぐに構って。
眠りたいから、放っておいて。

勝手気ままに、振舞って、王様気分に 踏ん反り返る。
足音 立てずに、摺り寄って。
硝子の瞳で、見上げて 一つ。
愛の声で 甘え声。

萌ゆる庭先 眺めし虚空。
飛燕の軒先 佇みて、
尻尾 振り振り 小春の背。

月輪の都 『飛心』

2005年6月28日
置石 雲を、飛び移り、朧に浮かぶ、虹の橋を 渡ろう。
空を自在に 駆ける靴は、天馬の蹄。

風に跨り、雨の飛礫を 衣と纏い、
髪に稲妻、飾りと付けて、
雷太鼓の 調子に合わせて、踊りましょう。

果て無き 海原、飛び跳ねて、水平線を 翔けましょう。
海を自在に 走る脚は、海馬の尾鰭。 

無限の周回、廻り渡って、飽きたなら、
少し 潜って、物見の遊山。
光の色を 愉しみながら、一期一会の幾万種。

遥かな高峰、底無き地溝、怯む事無く 飛び進もう。 
大地を自在に 操る靴は、陸馬の身体。

砂漠に涸れず、氷原に凍らず、底無し沼を 滑るよう。
輝石を喰べて、新緑を広げ、恵みの大気を 振りまこう。
嘶き一つ、獣を統べる 王者の威厳、咆哮を。

三千世界の大翼、燦然と。
想いを馳せよう、自在に飛べる その姿。
心だけなら、翔べるから。

月輪の都 『背面』

2005年6月27日
貴方の言葉は、乾いた大地を 潤す雨で無く。
貴方の声は、春を告げる 薫風で無く。
貴方の指は、氷結を溶かす 陽では無く。
貴方の視線は、絡まる糸を解す 鍵で無く。
貴方の想いは、雷雲を遠ざける 神風で無く。

醒めてしまった この瞳。
冷めてしまった この心。
覚めてしまった この想い。

無条件に 愛せない。
例え、系譜に連なろうと。

無条件に 許せない。
例え、寝食共にでも。

無条件に 飲み込め無い。
例え、型の写しでも。

心の揺れは 誤魔化せない。
例え、上手に繕うと。

心の歪みは 否めない。
例え、正誤がなかろうと。

心の軋みは 隠せない。
何処へ漏れ出る 悪意の様に。

月輪の都 『飛想』

2005年6月26日
今、此処に居ない君へ。

考えてしまうと辛くなる。
想ってしまうと 心配し、求めてしまうと 飢え、
認めてしまうと 泣きたくなる。

今、傍に居ない君へ。

空虚は語る、饒舌に。
回想の窓を開いて、視線を馳せて、
この空に繋がる 何処かの国で、君は 呼吸するのだろ。

無限に広げ、繋がり感じ、
極限に狭め、自己を失くして、還る先を 知る。

原子に僕が 居ないように、
宇宙に君が 居るように。

触れられないから、想いは募り、記憶があるから、耐えられる。
この億万の人の中、覚えていたいのは、君の事だけで、
悲しくなるのも、君の事だけ、と。

強く、深く、激しく、君を 想える事を、誇ろう。
優しく、そっと、穏やかに、君を 想える事を、誇ろう。

しなやかに伸びる、君の視線を。
見えない夢を、掴んだ君の掌を。
躊躇無く、大地を蹴った、君の足を。
羽ばたくように、広げられた 君の両腕を。
眩しすぎて、眼を細めて 見送ったけれど。

今、何処かに居る君へ。

追いかける事も、探す事も、しないけど。
引き止める事も、思いを告げる事も、しなかったけど。
君への 想いだけは、今も こうして 変わらない。
どうぞ、笑顔を 絶やさず、輝いて。
記憶の中の 君のままに。

月輪の都 『保護』

2005年6月25日
優しい嘘を 知っている。
切ない嘘を 持っている。
泣けない嘘を 感じてる。
消えない嘘を 背負ってる。

己を欺く、嘘を語り、己を惑わす、嘘を呼ぶ。

可愛い嘘を 囁いてる。
笑える嘘を 記してる。
宥める嘘を 捜してる。
埋める嘘を 塗っている。

遠目で視れば 解らない。
片目で見れば 判らない。
傾目で観れば 分からない。

つるり、きらり、てらり。
反射すれば、美味しそう。
ぺたり、しゅるり、ぽたり。
一色ならば、紛れそう。

口に出せない 本音なら、いっそ何処かに 閉じ込めて、
墓場の下まで、連れ行こか。
本音を ぶつ切り 分解し、微細に 分別したのなら、
人を砕いた 細胞の様に、私が居なく なるのなら。

苦しい嘘など、絞り付かずに 済むのだろうか。

月輪の都 『予感』

2005年6月23日
もう一度、君と 出会って、見つめてみたい。
心に何か、生まれるならば。

漣の様に、訪れて。
汐の満ち干きの様に、姿をかえて。
その有り様さえ 変えてしまうかも 知れないから。

微かな音の様に、やって来て。
何時しか 耳に つくように。
何時しか 心に 刻むよに。
何気ない、日常の傍らに 居て、
何時しか そっと僕の中心に 居て。

君に感じた 予感を どうか、
僕の胸に 確信させて。

どんな 巧みな 言葉より、
どんな 美麗な 姿より、
どんな 上手な 擬態より、
僕に 響く 君の声で。

もう一度、僕に 語って くれないか?
もう一度、君に 再び、出会えるならば。

月輪の都 『深度』

2005年6月21日
浅い恋に、二人して、はしゃいで 飛び込み 見上げたら、
微細な気泡は ゆらゆらと、天上目指して 昇り行く。
陽の光が 射す道を、甘い吐息の道標。
色鮮やかな 住人が、夢見心地に 時 奏で、
何時何時までも、浸りたし。

深い愛に、沈んでゆけば、繋いだ其の手を 離さぬように。
二人の身体は 姿を変えて、二人の瞳は 閉ざされて、
時も流れも 止めた様に、明けない夜が、続くから。

恋と愛の硲に 横たわる、揺らぐ情に 留まれば、
迷い、戸惑い、竦んで、溺れ。
囚われ 籠められ 穿たれる。
黄昏海に、朝も夜も 廻る事なぞ無くて、

浮上の恋海、朝の色。
潜水の愛海、夜の色。
佇み 彷徨う 情海は、人魚の国と、思し召め。

見上げる 頭上は、恋の深度。
見下ろす 足下は、愛の深度。
今在る 此処は、情の深度。
 
深い愛に、行くべきか。
浅い恋に、帰ろうか。
それとも、揺らぐ情に、流されようか。
恋魚に冷めて、愛魚に躊躇い、人魚のままで、捜してる。

此処で 逸れた、嘗ての誰か。
もう、顔も名前も 思い出せないのだけれど、
確か、一緒に 飛び込んだ 筈だったのにね。

私は 誰を 捜してる?
同じ人魚を 捜してる。
この境界線で、総てを 見失って しまったから。

月輪の都 『絵巻』

2005年6月14日
薄闇の 灯火の下、
そっと 小指で 紅を 乗せ。

闇に交じらぬ 碧の黒髪、
白い手櫛が 後をひく。

しゃなり しゃなりと しな作り、
鏡の中で 微笑みを。
細めた瞳を 飾る睫は、長く 尾を引き、縁取りを。

陽の目を見ない、肌は雪。
宵に咲く 肢体は露草。
褥に侍る、命は射干玉。

紫檀に 螺鈿の蝶が舞い、
漆に 金色の鷺が行く。

玉手の箱に 閉じ込めた、私信は 届く事はなく。
色恋事を 囁くよりも、異郷の話をしておくれ。

この打ち砕かれた、足を引き摺り、何処へも行けぬ。
この眩まされた、視界を頼りに、何処へも行けぬ。
この破られた、鼓膜は鈍く、何処へも行けぬ。

この閉ざされた、座敷牢、既に、何処かすら、解らぬ場所。
届かぬ天窓、僅かな光。
指折る事も、記す事すら、想いも付かぬ、
ただただ 想うは、夢物語。

富岳の高嶺、孤高の岸壁。
青砂の浜の桜海、碧玉の淵の静寂、語っておくれ。

伏せた 瞼の裏に、描くから。
私が 独り、佇む様を。

6月4日の日記

2005年6月4日
一人しか 救えなかった事を 嘆くのか。
一人でも 救えた事を 喜ぶのか。
一人しか 守れなかった事を 悔いるのか。
一人でも 守れた事を 感謝するのか。

それは 自身の心の 境界線。
他人に 何を 言われても、納得せねば 進めぬように、
穿たれ 揺るがぬ 塔は、その根を 深く 下ろしてる。
立柳の様に、撓りながら、無駄な贅肉を 振り落としながら、
その芯のみを 護るように。
己の心を 削ぎ落とす、鋭い刃で 躊躇わず。

其処に、芯が残るか 否か、それは 定かで ないけれど。

6月4日の日記

2005年6月3日
ぽつりと 小さな きっかけが。
ふと 見上げて 延べた掌に、形なさぬ一滴の雫。
空は 今にも 泣き出しそうに、瞬き一つ、
堪え切れずに 堰を切る。

心洗う 時もあり、心凍える 時もあり、
心隠す 時もあり、心慰める 時もある。

涙を隠し、涙を誘い、悲しみ覆い、喜び呼んで、
変わらぬままに、雨は落つ。

常なる非情は、視界をくゆらし 滲ませる。
更なる悲痛は、顔面を歪ませ 体をよじる。
常なる悲嘆は、声を張り上げ 枯れさせて、
鳴咽は 呼吸を 閉じ込めて。

誰も 私を 見るなかれ。
誰も 私を 知るなかれ。

6月4日の日記

2005年6月2日
ふと、考えなければ、躓く事は、
なかったのだろう。
ふと、立ち止まらなかったら 惰性で転がり、
続けてたのだろう。
ふと、掌に、視線を落とさなければ、
気付かず、行き過ぎていたのだろう。
ふと、振り返らなければ、悲哀を覚える事も、
なかったのだろう。
ふと、見渡さなければ 空しさ感じる事も、
なかったのだろう。

過去に戻る 希望は無く、
現在に留まる 願いも無く、
私は、一足跳びに 寿命の際に望みたいと。
叶わぬ望みを 連ねてごらんと、言われたら、
正直 そう 答えるだろう。

6月4日の日記

2005年6月1日
春の病は 恋患い。
命の盛りぞ、伊吹の風は、心 くすぐり 揺り起こす。
秋の病は 物想い。
暮れる 寂しさ、引き連れて、人肌恋しと 囁いて。
夏の病は、恋熱病。
眠る 細胞とてなくて、激しい 陽の如くに 噴き上げ、
焦げる 痛みに 陶酔す。
冬の病は 恋風邪病。
凍えた心が 暖を求めて さ迷うように。
狩人じみた 鋭い瞳が、常に 何かを 探してる。

6月4日の日記

2005年5月31日
指先を 藍に染めて、
唇を 紅に染めて、
想いを 愛に染めて。

小指を 緋紐で 戒めて、
鋼の 想いで 断ち切って、
懐紙に くるんで、弔いを。

眠りよ深く、宵の底。
想いよ遠く、旅行けと。

飛んで、貴方に届くなら、ちぎれる 涙を 流しましょ。
呼んで、声が届くなら、潰れるまでに 叫びましょ。
言葉遊びの 色恋も、紡ぐ夜の戯れ事も、
夜明けの葬送、見送る影なき 女郎宿。

私の連休。

2005年5月18日
萌ゆる 庭先、眺めし 虚空。
飛燕の軒先、佇みて。
尻尾 振り振り、小春の背。

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