月輪の都 『自問』

2005年4月28日
耐え切れないと、悲鳴を 上げたならば、
誰か 聞いてくれますか。

堪え切れないと、涙を 絞ったならば、
誰か 拭ってくれますか。

痛みに引き攣る、苦悶の表情(かお)を 浮かべたならば、
誰か 癒してくれますか。

崖の淵に 足かけて、すくんだならば、
誰か 躊躇い 呼んでくれますか。

呼吸停止寸前の 喘ぐ 吐息を 顕にしたら、
誰か 救ってくれますか。

そんな 都合の いい事なんて、おこり得ない 絵空事。
そんな 自侭な 望みなんて、おこがましくて、口には 出せない。

私を 苛む、孤独の塔が。
私を 慰める、孤独の海が。
私を 繋ぐ、孤独の翼が。
私を 導く、孤独の声が。

微妙な、心地良さが、私を 放さない。
些細な、拘りが、私を 離さない。
幽かな、惑いが、私を はなさない。
天秤は 夜、架けられる。
月を片手に、罪を片手に、傾ぎは 罰を顕す 目盛り。

断罪は 夜、宣告される。
万感の微笑を 讃えた横顔、返す光りは、隠匿すらを許さない。

道行は 夜、指し示される。
鋭く柔く、延ばした指先、色も齢も 見る者に 異なり違い。

判決は 夜、書き記される。
極楽帖か、閻魔帖か 知らぬけど。

深き業は 夜、密告される。
身中深くに 潜んだ蟲が、ざわめく音で、哭きながら。

因は 夜、生産される。
果の精算を伴って。
応報の理どおりに、躊躇い 無く。

星の輝きさえも おしなべて、真昼の如き 明るき月夜。
美しき犯罪を、顕に映し、遮る 影とて、貫く 断罪の刃は、
己が 心底を暴く 矢と。

内腑が 這いずる 不快さと、
襟足が ちりつく ざわめきと、
胸が きりりと 締めつけて、
湖底に沈んだ 異世の主が、ぞろりと 蠢くように、
脳が むず痒いと 告げている。

言葉に表せない 苛立ちと、
忘れ去れない 疼きは やむことなく、
夢の中まで 追い掛けて。

罪過の月夜に、悔いたれば、轍の深さを 思い知る。
裁科の月世に、喰いたれば、吾が罪の腐臭を 想い知る。

今日は…。

2005年4月26日
お返事だけ…。
零°の君と、壱°の僕。

こんなにも、すぐ傍に いるのにね。
何処かしらに、焦点は見えるけど、
それは ほんの一瞬、気休めみたい。
放射状に、さよならしたら、二度と 交わる事 無いね。
目指した場所が、小さな範囲だったなら、
きっと、再び 顔逢わせる事も、無いだろね。

零℃の君と、壱℃の僕。

ほんの些細な 違いしか ないのにね。
時間が、総てを 明らかに してしまうよ。
形を変えぬままと、形を保てぬままと。
こんなに、近く寄り添って、
それでも、背中合わせに 歩き出すみたい。
歩み寄ることは、無いみたい。

零の君と、壱の僕。

君が 何かを 得ていれば、僕が 何かを 捨てていれば、
君が一歩、僕が一歩、同時に 踏み出しちゃ、いけなくて。
君が一歩、僕が一歩、譲り合って、権勢しあって、見合ったままさ。

何時も、届かないから、忘れない。
何時も、添えないから、覚えてる。
零の姿の君と、壱の姿の僕。
零の心の君と、壱の心の僕。
零の点から 動かない、一の点から、動けない。
君と僕の、恒久点。

月輪の都 『棘』

2005年4月18日
流れる雲の 行方を追って、遠く 彼方に 視線を馳せる。
遮るものさえ 無い空と、人は語って、夢を紡ぐのだけれど。

あてどなく、よるべなく、彷徨う様(さま)は、
空虚な 朧に 思えてならぬ。

安堵を 覚えぬは、己が 揺らぐ心が 故か、
人との距離を 置くは、己が 心の弱き 故か、
年月(としつき)重ねる 度に、
小さく蹲(うずくま)り込んで、しまったように、
思えてならぬ。
恐れを 抱くのは 何故なのか。
傷つく事を 避けるのは 何故なのか。
 
何時から こうして、立ち止まってしまったのか、
辛いけれど、思い返さねば ならぬのだろか。
苦しいけれど、掘り返さねば ならぬのだろか。
上手に目隠し、出来なくなった 今だから。

自身を穿つ 杭の端、風に晒され、朽ち始め、
容易に 抜き去る術を 赦さぬように。 
永きに、黙認していた 事を、咎めるように。、
小さすぎて、見えなかった訳でなく、
小さい事だと、言い聞かせた、愚かな行為の代償か。

期限は、とうに、過ぎていた。
患部は、病変を、告げていた。
今、この時に、肉を抉って、杭を 取り出すか、
先、何時かに、日延べして、腐り落ちて 落としてしまうか、
前、戻らぬ時に、心だけを 飛ばして、嘆き 暮らすか。

色を憶えぬ その空を、仰ぎ仰ぎて、鐘の音を 聴く。
梵鐘謳う、深夜の音か、
晩鐘謳う、烏の音か、
警鐘謳う、事変の音か。

色を定めぬ 漂う雲の、観えても掴めぬ、憂いを 訊く。
雷雲昇る、真昼の転か、
茜雲昇る、夕暮れの終か、
銀雲昇る、氷柱の起か。

時は今、時は先、時は前。
心は今、心は先、心は前。
無かった事には、出来ぬのが故に、見定めよ。

月輪の都 『余地』

2005年4月13日
行きたい場所が あるのなら、僕は まだ、大丈夫って事。
やりたい事が あるのなら、私は まだ、大丈夫って事。
手に入れたい物が あるのなら、君は まだ、大丈夫って事。
観たい世界が あるのなら、あなたは まだ、大丈夫って事。
 
例え それが、空の果てでも。
例え それが、実現不可能でも。
例え それが、形の無い物でも。
例え それが、理想郷でも。
 
僕は、私は、君は、あなたは、
眼を瞑って 思い浮かべる、何かを 心に 持つならば、
明日を 信じて、眠れるでしょう。
 
未来を疑い、背を向けて、拗ねて いじけて みせてるだけと、
そろそろ、気づいても、いい頃さ。

明日が 来ることを、当然の様に 思い込んで、眠るなら。
何も、心配する事なんて、ありはしない、とね。
そろそろ、気づいても、いい頃さ。

月輪の都 『崖淵』

2005年4月12日
私の罪は、海より深く、私の穢れは、山より高く。
私の罪は、大地よりも 重いもの。
私の掌は 血よりも紅く、私の髪は、闇より暗い。

涙を抑える 掌など、持ち合わせていない。
悲嘆を叫ぶ 声など、持ち合わせていない。

この掌は 鋭い剣を 握り、
この声は 限りに、憎悪の呪いを 吐くだろう。
複雑に絡んだ、心の意図を、解す前に、断ち切ろう。

このまま そっと、奥底で、息を潜めて くれるなら、
想いを堅く 閉じ込めて、氷の笑みを 浮かべよう。

血沸き 肉踊る 感覚に、麻痺して 暫し、舞い踊ろう。
千切れた手足を 引きずって、狂ったように 哂いましょう。

心を 一つ、殺すには、燃やし尽くす 残酷さ。
心を 一つ、殺すには、己が手足を 喰い千切る、
狂った想いが必要と。
吾が子でさえも 喰い殺す、羅刹の所業の、冷徹さ。

別れは 淡白な方が いい。
余計な 時を、かけぬが いい。

演じ切るなら、最後まで、舞台を 終える その瞬間まで、
己が言霊で、己 自身を、騙す為。

振り返らずに、行くが いい。
立ち止まらずに、行くが いい。
些細な 異変も、悟られぬように。
蒼き空より 降り来たる。
藍き海より、迫り来たる。
青き山より、吹き来たる。

弓の翼ぞ、壁の波ぞ、粒ての風ぞ。

想いに 掛けぬ、禍いと。
駆けて 去れぬ、襲来と。
跳びて 退れぬ、急転と。

紅き 炎星、堕ち来る。
朱き 渦潮、寄せ来る。
赫き 野火、押し来る。
 
悲鳴も 呑息も 驚嘆も、声に出す 暇も無くて、
叫びの形の、押し黙る。
涙は 騰き、涕は 凍て、涕は 千切れ。
深く閉ざされ、流され行くは、ほの暗き 根の国、底の国。
 
折り重なる 落ち葉の様に、幾重の地層に 埋没し、
堅い 硬い 石となる。

碧き彩を 最後の色と。
丹き彩を、最後の色と。
その組織の一部に、留めて 眠る。
君が 手を降る 夕焼け道に、
伸びた 影踏み、後を追う。

君が 手招く 砂浜に、寄せる波間を 漂って、
腕の櫂 漕ぎ、いざ戻る。

君が 手を指す 頂に、仰ぎ仰ぎて、杖付きて、
踏み締め 乗り越え、登り行く。

君が 手を広げた 化野で、背丈の薄を 掻き分けて、
進み 歩まん、黄昏と。

君が 手を延べ 月下の元に、青竹さざめく、笹船の宵。

君が 手に受け、零れる雫、空を 締める 霧の中、
懲らした眼で 見つめて駆ける。

君が 手に遊ぶ 花びらは、惜しむ春に 舞い散りて、
傍に 寄添い、眺めたし。

君が 手を取る 白銀の雪輪、凍えぬように、
暖かい 伊吹を そっと吹き掛けて。

懐かしきかなと、目を細め、
遥かな 憧憬 重なり憶え、君の姿を 探す旅。

四季を彩る 時間の中で、君を思わぬ 時は無し。
見渡せば、そこかしこに 遺る残像は、
我が眼に 焼き付き 消えぬまま。

心ぞ、啼くな、君が為。
心ぞ、喚ぶな、君が為。
安らかに、穏やかに、静かに眠る、君が為。
妹が背の夢、通りなば、
汲みたる涕(なみだ)の、泉も涸れ果て、
映る影 亡く、噛み締めて。

覗く 底土、残されたるは、結晶ぞ、
想いの粋と、見定める。

純なり 綺なり 輝いて、
今ぞ、心に 甦り、
足跡遺して 立ち去る影と。

限りに 延ばす、此の掌の内に、
掴めぬままに、転がりて、
届かぬ 輝き、眼に 刻む。
 
心が、離れたの ではない。
心を、離さなければ ならぬだけ。

其の手を、断ち切ったの ではない。
其の手を、振り払わねば、ならぬだけ。

此処に、残して 行くのではない。
此処に、残さねば、ならぬだけ。

偽りを、語ったの ではない。
偽りを、語らねば、ならぬだけ。

同じモノを 護る為、違う道を 行かねばならぬ。
同じ未来を 望む為、違う世界を いかねばならぬ。

君を 此処に 留め置く、深い意味を 告げぬのは、
君が 此処に 在る為に、今は 臥して 立ち去ろう。

月輪の都 『暮春』

2005年3月29日
ぼんやり 寝覚の 春の宵。

視覚の春は 美しく。
弥生の空は 肌寒し。
温かな転寝、心に描きて、
窓を覗いて 冬の名残に ため息を。
雪割草は、ちらほらり、
それでも 吐息は今だ白々と。

明け染め やらぬ 空のよに、
芽吹きの頃合 見合わせて、
童の 歩みの 如き春。

月輪の都 『独唱』

2005年3月24日
願わくば、回歸の道を、辿りたし。 
祈らくば、離合の悲哀、放たれたし。 
叶わくば、迂遠の一期、終わりたし。 
されど、夢は 夢のまま。

豺狼 狙う、灯火ぞ、幽かの 望み、絶つ 勿れ。
忘却 赦さぬ 傷痕が、呪いの言霊、吐くばかり。
されど、夢は 夢のまま。

須臾、彷徨う 閻浮提。
泡沫の夢幻と、然も有りなん。

月輪の都 『幻夢』

2005年3月23日
重なり 響く、その声は、迦陵頻迦の 謳のよう。
水鏡を 観るような、揺れる姿は、
慈悲の菩薩の 笑みのよう。

現われ来る 幻は、記憶に 留めぬ 筈だのに。
万感の想いを 引き連れ 甦る。

触れなば 消ゆる 幻ならば、そっと、そのまま、其処に居て。 
届いた刹那に 消え去る 幻ならば、
この指 延ばさず、其処に居て。 

空虚を掴む 虚しさを、この身に憶えて しまった故に
残る 哀しみ、招かぬように。 

幻だから、其処に居て。
幻だから、欲しい 言葉を ください、と。
幻だから涙 堪(こら)える 術(すべ)がある。

自身が 喚んだ、幻ならば。
自身が 望んだ、幻想ならば。

夢に様に 囁いて。

月輪の都 『不問』

2005年3月19日
愛を 学ばなかった者が、愛を 得るのは、難しい事。
愛を 知る者は、愛を 殺すのは、難しい事。

愛を 操る者は、愛を 手放すのは、難しい事。
愛を 奪う者は、愛を 育むのが、難しい事。

愛を 分かつ者は、愛を 集めるのが、難しい事。
愛を 語る者は、愛を 描くのが、難しい事。

如何に、広く、如何に、深く、如何に 多様な、不可解さ。
定義が 無いから、難しい。
生きる意味を 問うように。
正解などが、無いように、常に 事例が 在るばかり。
遍く世界に 轟き渡る、楽土の謳の 片鱗を、
刻み給え この御魂。

此処は 遥かな 天空の、夢を 閉じ込め、或る世界。

密やかなりし、営みに、緩やかなりし、流れの中で、
たゆたいながら、謳歌す 春よ、朧の夢を、引き寄せ 給え。

囀る鳥は、健やかに、萌える緑は、伸びやかに、
流れる 渓流、清々し。 
野の花 までもが 麗しき、楽土の朝ぞ、喜詞を祝れ。
蜘蛛の糸は、何の為。
空を 渡る為さ、ふわふわ、ふわり。

蜘蛛の糸は、何の為。
巣を 張る為さ、とんとん、からり。

蜘蛛の糸は、何の為。
餌を 絡める為さ、しゅしゅ、しゅらり。

蜘蛛の糸は、何の為。
咎人 釣る為さ、つんつん、つらり。

蜘蛛の糸は、何の為。
操る恋を、呼ぶ為さ、くるくる、くるり。

蜘蛛の糸は、何の為。
美味し 君を 喰う為さ。ばりぼり、ばりりん。

とても、とても、細い糸。
朝露きらり、輝いて、夜泪ぽろり、爪弾いて。

ねぇねぇ、喰べても いいよ、僕の事。  
だから、今夜は そっとそっと、腕の中、
君を 抱いても、良いですか?
壊れてしまった 僕たちは、同じ 過ち 繰り返す。
歪んでしまった 僕たちは、同じ 道程 繰り返す。
排斥 された 僕たちは、同じ 轍を 繰り返す。
否定された 僕たちは、同じ 言葉を 繰り返す。
異端視された 僕たちは、同じ 行為を 繰り返す。
世俗に馴染めぬ 僕たちは、同じ 逃避を 繰り返す。

誰もが 強い わけじゃない。
誰もが 添える わけじゃない。
誰もが 望んだ わけじゃない。
誰もが 勝者に なりえない。
誰もが 住める 社会じゃない。

それでも 僕らを 取り巻く 小さな世界、
大きな誤解に 支配され、時代の波と 銘打って、
理解者ぶりを 披露する、君こそ 偽善の王様さ。

見知らぬ人さえ、指を刺し。
知ったかぶりの、解説者。
隠した口元、透けて見える、皮の下。

賛同者なんか、要らないよ。
共感者なんか、要らないよ。
扇動者なんか、要らないよ。

根底だけを 共有できる、們だけが、欲しいだけ。
悲劇と 詠うには、残酷な。
悲恋と 語るには、辛酸な。。
悲笑と 評するには、冷惨な。

孤高の主は、嵩き山の 頂に、暗く深き 海底に。
遥かな 大地の果てに、辿り着けない 天空の彼方に。
灼熱の砂漠、極寒の氷土、安住の地ではないけれど、
心惹かれる世界のように、相容れる事の無い、赦されざる 密かな禁域。
 
重なり 逢うては ゆかぬ、
寄り添い 会うては ゆかぬ、
交じり 合うては ゆかぬ。

例え、千年に一度の 廻り逢いとて、好機か否か。
それを 定める法は無く、己の律が 下す論。
目が醒めたら、きっと言おう。
目が覚めたら、きっと伝えよう。
悲しい夢を 見たんだと。
哀しき憂迷(ゆめ)を 視たんだと。

君の砂像 さらさらと、風に 波に 掠われて。
君の雪像 ゆらゆらと、朝陽に 大気に 溶かされて。
君の微笑み 欠けたる口元、
伏せた瞼の 切なさに、内腑を掴む 苦しさと。

呼吸すらも 拒絶した、動かぬ体は 鉛のようで、
君の崩れゆく、姿の前で、為す術なく 見上げるだけで。
懸命に 手を延ばしても、決して届かぬ 酷責の距離は、
足枷 食い込み、血を流し、鋼の鎖が 繋ぎとめ、
それでも 地面に 這いつくばって、
震えるこの手を 延ばす先。

食いしばった 唇に、滲んだ鉛の 苦さが残る。
激痛に 掻きむしる この胸も、消えない爪痕 紅い線。
喉は涸れて 焼き付いて、叫びも 耳に 届かない。
君が 壊れてゆく様を、唯一 自由な 泪だけ、
僕の頬に 零れて 落ちて。

それは、君を 映しただけと 思えぬのは、
砂に、雪に、なる前に、
確かに 其処には、生身の君が 佇んでいたから。

優しい声は、何時ものように。
柔らかい 眼差しは、何時ものように。
差し延べられた、華奢な 指先も、
しっとりとした その白い肌も、
流れた 豊かな 黒髪も、君は 在りし日の ままで。
僕の心に 住み続け、今も 微笑む 幻影よ。

どうして 君は、砂の海で。
どうして 君は、雪の原で。
どうして 君は、消えたのか。

崩れた 塔の上に 横たえた、君の亡骸、天へと 還る。
飛び立つ鳥に 身を任し、吹きすさぶ 風に掠われ、
積る雪に 埋もれて、君は 帰る、風葬の地へ。

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