二人で 一つの杯を、二人の頭上に 掲げてきたね。
玻璃の輝き 放つ杯、それは 綺麗な 結晶を。

時には 二人で 向かいあい、
時には 横に 並びあい、
時には 背(せな)を 重ねあい。

何時も、囁き聴こえる 距離で、苦海も 砂漠も 越えてきた。
雲を 切り裂く 霊山さえも、何時しか 越えて しまったけれど。

歩みが 変わった 訳じゃない。
老いて 変わった 訳じゃない。
疲れ果てた 訳じゃない。

それでも、君が 手を離したら、きっと 僕も 離すだろう。
それこそ 寸分の 躊躇い無しに。
玻璃が 落ちて、割れるまで、一瞬以上に 短いだろう。
だけど、きっと 二人共、慌てることも 無いのだろう。

玻璃の欠片が 完全に、動きを止めて しまっても、
一瞥すら 与える事も ないのだろう。

残念だけど、僕たちは、掲げた 玻璃の杯を、
大きく 綺麗に しただけで、変質させる事は しなかった。
何時しか それが、無用なモノだと、気付いてしまった だけの事。 

僕が この手を 離すのを、君が その手を 離すのを、
息を 潜めて、待っている。
互いの口に、微笑み浮かべ。

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