天秤は 夜、架けられる。
月を片手に、罪を片手に、傾ぎは 罰を顕す 目盛り。

断罪は 夜、宣告される。
万感の微笑を 讃えた横顔、返す光りは、隠匿すらを許さない。

道行は 夜、指し示される。
鋭く柔く、延ばした指先、色も齢も 見る者に 異なり違い。

判決は 夜、書き記される。
極楽帖か、閻魔帖か 知らぬけど。

深き業は 夜、密告される。
身中深くに 潜んだ蟲が、ざわめく音で、哭きながら。

因は 夜、生産される。
果の精算を伴って。
応報の理どおりに、躊躇い 無く。

星の輝きさえも おしなべて、真昼の如き 明るき月夜。
美しき犯罪を、顕に映し、遮る 影とて、貫く 断罪の刃は、
己が 心底を暴く 矢と。

内腑が 這いずる 不快さと、
襟足が ちりつく ざわめきと、
胸が きりりと 締めつけて、
湖底に沈んだ 異世の主が、ぞろりと 蠢くように、
脳が むず痒いと 告げている。

言葉に表せない 苛立ちと、
忘れ去れない 疼きは やむことなく、
夢の中まで 追い掛けて。

罪過の月夜に、悔いたれば、轍の深さを 思い知る。
裁科の月世に、喰いたれば、吾が罪の腐臭を 想い知る。

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