月輪の都 『箱舟』

2004年12月23日
どうぞ 大地を 見つけておくれ。
両手を 放れた 白い鳩。
どうぞ 我等が 還る地を、みつけてきては くれないか。
空を渡る 翼を持って、きっと 此処へ 帰るよう。
あてどなく、流され 流離う 船に 乗り、
希望の種を 詰め込んで、未曾有の厄災、越えたけど。
星に祈る 術しか持たず、先を写さぬ 日没に、
今宵も ゆられ ゆられて 眠る。

どうぞ 未来に 送っておくれ。
深い 哀しみ、組んだ 両手に 綴じ込めて。
白い煙が 立ち込める、凍える冷気に 包まれて、
硝子の柩に 蓋をする。
確信などは ありようはずも ないけれど、
何時か 再び 目覚めたら、時は 遥に 先の筈。
文明 進んだ 先なのか、荒廃 進んだ 先なのか、
それとも、先など 無いのかも しれないけれど。

私は 希望という名の 船に乗り、
大海原に 解き放たれた 箱舟に、想いを 馳せて 眼を閉じる。
もしも、大地に 辿り着き、船の扉を開けた時、
私が 独りで ないことを、切に 切に 願うのみ。

まだ見ぬ 蓬莱、夢 賭けて、千の童を 引き連れて、不死の妙薬 捜しにゆくと。
いにしえ 遥に 逃げた人。
行き着く先が ある事を、知りてはいても、知らぬふり。
確かに そこには あるのだけれど、賭ける命に 保障が無くて。
それでも 旅立つ 故、同じ。

天変地異を 知りながら、備えなくして ゆく事など。
臥して 死を待つ 諦めも、指折り 数える 白き日々など。
忍び寄る 死を知って、まんじり暮らす 決意など。
どうして 遁世 出来ようか。

命の蝋燭 見えたから、燃える炎が 急きたてる。
時の息吹が 容赦なく、命の炎 揺らすから。

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