襤褸の遺骸を 抱きながら、幾度も乳を 含ます母猿。
皮一枚で繋がった 足を引きずり、群れより 逸れまいとする豺(やまいぬ)。
羽が抜け落ち 骨も露な片翼で、空を掴めと 羽ばたく海鳥。
蛆の湧いた 潰れた眼で、残飯漁る 子連れの雌豹。

それが 生きると 言う事か。

産んであげられなくて ごめんなさいと、氷の河に 沈む母。
野武士に 獲られる末ならと、手負いの父の 首掻く子。
この子だけでも 助けてと、劫火の中から 託した両手。
十の命を 延ばすため、百に別たれ 千に散った肉体。
衆生の願いを 一身に、集め負わされ 湿った地下の石室に。
至上の神への奉公に、万里を越える 旅の終焉 雲の上。   

それが 生きると 言う事か。

人は 甘美な夢を、餌にして。
獣は 満たす腹を、餌にして。
木々 は世代を残す術を、餌にして。

それが 生きると 言う事か。

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