僕は 疑いもなく 待ち続けていた。
私は やって来るのだと 待ち続けていた。
たった一歩の距離で 向かい合わせに 微笑んで。

僕は 与えられるものだと 待っていた。
私は 提示されるものだと 待っていた。
互いの立場に 甘んじて。

僕は 子として 親に期待していた。
私は 親として 子を信じていた。
言葉にしなくても 解っているものだと 思い込んで。

僕は 安心感という 保険が 欲しかった。
私は 決意という 意思表示が 欲しかった。
互いに 口火を切るのを 我慢して。

僕は 遠まわしだけれど 幾度も 信号を出していた。
私は 真意が見えなくて 幾度も 密かに探っていた。 
それで 気付いているはずだと、胡坐をかいて。

僕は 常に 遠慮しながら 甘受してきた。
私は 常に 気遣いながら 甘やかしてきた。
それを仮面といい、それを意思の尊重という。

僕は 区切りを 限度を 求めてた。
私は 決断した道と 信念を 求めてた。
今まで そうして 生きてきたのだけれど。

僕は 大人という響きに酔い、本質を考えた事など 無かった。
私は 成長という幻想を抱き、悩みを汲む事など 無かった。
心と体の成熟度は 比例など しはしないのに。

僕は 分別と気遣いが 世渡りの手段だと 勘違いしていた。
私は 持って生まれた 性分なのだと 勘違いしていた。
己を護る方法は 十人十色と 気付かずに。

僕は 精一杯の背伸びして、足が吊っても 笑ってた。
私は 精一杯の虚勢を張って、火の車でも 笑ってた。
根性論と 自力が 生きる糧だと 信じてきたから。

僕は 実利をもって孝行と、我が親への想いを 強めていた。
私は 見返りを求めての援助など、我が子に強いた 事はない。
究極的には 他人だから、情を絆に育てて きたのにね。

幾つになっても、親は親。子は子に過ぎぬ事。

甘えの意味を 誤解して、互いに責任を 押し付けあって、
僕は 私は 立ち尽くしたまま、相手の出方を 待っていた。

信頼の意味を 買いかぶって、真意を探りあいながらも、
僕は 私は 立ち尽くしたまま、分かり合えずにいた。

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