月輪の都 『餓鬼』

2002年7月13日
幾度 体を 重ねても、
幾度 心を 添わせても、
幾度 指を 絡めても、
私の 中身は 満たされず。

幾度 背中を 並べても、
幾度 腕を 回しても、
幾度 言葉を 交わしても、
私の 渇きは 癒されず。

甘い声は 囁きは
熱い肌は 唇は 
強い力は 優しさは
刹那の幻 綺羅の灯火。
瞬きほどの 白昼夢。

足りない何かを 補う為に 
誰かを 求めるのだと 人は言う。
足りない何かを 求め合う者たちには
体の凹凸は しっくりくるのだろう。

けれど 私は 餓えたまま。
幾度 貴方を 喰らうとも、
幾度 貴方と 睦んでも、
私の 夜叉は 納まらぬ。

私の心は 貪欲な 餓鬼と なんらかわりなし。
私は 貴方が 欲しいわけじゃない。
求め彷徨う その訳を、
貴方は 知らぬ方がいい。

叶わぬ願いと 知ってても、
私の心の奥底に 燻る思いは 只一つ。
私が 惹かれた その全て
裂いて 縊って 引き剥がし、
自分の一部に したいだけ。

餓鬼の如くに 噛みついて
骨も残さず 喰ろうたら、
貴方の腕は 頭は 心は 
私の肌を 突き破り、立派に生えてこぬものか。

今宵も 鋭い爪を研ぎ、
濡れた瞳で 見つめては、
紅く彩る唇が 妖しく歪み 微笑んで、
こちへ来よと 誘いを。
私の腹に 私の内に 私の細胞に
馴染んで やがて 混じるよに。

http://www.rinku.zaq.ne.jp/haruka-akito/

コメント

お気に入り日記の更新

テーマ別日記一覧

まだテーマがありません

最新のコメント

日記内を検索