それは微睡み 夢は果て。
仰いだ空に 色は無く。
伸ばした両手は 霞みの中に。

見開く瞳は 漆黒の 闇を湛えて 溢れ出す。
鋼の枷を つけられて、皮の紐で 括られて、
流砂に呑まれる 感覚が、私を蝕む鬼となる。

頭をもぎる耳鳴りが 腹を破る蠢きが
骨を砕く激痛が 引き摺りだされる神経が
私を喰い荒らす 鬼となる。

皮膚が弾けて 血が滲み、
爪を紅く染め上げて 苦痛に顔を歪めても、
内腑に起こる痒みの如く、
その手を 止める 手立てなし。

息を止める 熱風は 湿気を孕んで 
まとわりついて、火照る体は 熱を帯び、
沸いた脳は 理性を欠いて 暴走する。

夏の夜に 獣が 激しく 吼えるのは
浅き夜に 眠れぬから。
夏の夜に 獣が 首を もたげるは
浅き夜に 箍は壊れて 解き放たれるから。

咽喉にくぐもる 唸り声。
獣は 人の中にあり。
咽喉に渇きを 感ずるは
獣の性と 覚えたり。

 

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